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出会い

ルレ・ルイ・トレーズを辞めた次の日に、オペラにある語学学校への手続きをしに行った。

僕が入った語学学校は、パリに幾つかある学校の中で一番授業料が安かった。
授業は月曜から金曜までの午前中に2時間だけ。なのでたくさん宿題をだされる。
授業時間が短いので、教科書の進みは早い。予習復習をきちんとしなくては。

土、日は学校がないので、今までは たまに顔を出す程度の日本人料理人の集まりに、ちょくちょく出るようになっていた。

その集まりには、ターブル・ダンベールで出会ったシュンの勧めで行くようになる。
そこにはいろんな料理人が集まった。
ほとんどがジュンの部屋でひらかれる。

ジュンこと、現在和歌山県のHotel de YOSHINO でシェフとして腕をふるう手島純也シェフ。
ここでたくさんの料理人と出会った。
そのほとんどは、現在はシェフとして活躍されている方ばかりだ。
毎回、料理人は何か料理を作って持ち込み、それ以外の方は、飲物を持ち寄る。

P1090526_R.jpg


 ある日、その集まりでブルゴーニュのボーヌという街で仕事をしていた料理人仲間がパリに来るが、部屋がないからだれかの家に数日泊めてほしいという話を聞き、僕の部屋に泊めることにした。
彼の名前は松浦隼平。 現在は結婚もして子供もいるパパ。大阪で頑張っている。


P1090530_R.jpg

 隼平が部屋に来て、よく2人でパリの街を歩いた。
野生の野ウサギ丸のまま1羽、市場で売られていたのを見て衝動買いして、部屋でさばいて料理したり、青首鴨を買ってきて、部屋に羽毛をまきちらしながら自分達だけの贅沢な晩餐を楽しんだり、やっぱり僕達は料理人なんだな。

野兎調理中

 そのうち、一時帰国していたシュンまで転がりこんできて、6畳一間の僕の部屋にむさくるしい男が3人雑魚寝状態。
なんだかんだで、かなり僕のフランス語の勉強の邪魔をされていた気もするけれど、それはそれ。
気の置けない仲間が出来てとても嬉しかった。

あるとても天気の良い日。
リュクサンブール公園にて

リュクサンブールにて。 このころ日本から観光に来ていたカメラマンの卵がとった一枚。


そんな感じであっという間に2,3週間が経ち、隼平の仕事が決まり、部屋を出ていくことになった。
最後に、お礼にと、隼平が食事を御馳走してくれる。

それが”Le Severo”というお店だった。

その店は14区にあった。大通りから少し入った細い路地の角に、いかにもビストロっていうレストランがある。
扉を開けると左側の壁一面が黒板になっていて、ワインや料理の御品書きが羅列されている。

店内は結構せまくて、25席位がやっと確保できる感じ。
予約していたらしく、僕たちは席へと案内されて、オープンキッチンになっている調理場を見ると、日本人料理人が一人で料理をしていた。
メニューを見ると、肉。 しかも牛肉しかない。牛肉の各部位によって値段が変わる。 
前菜に牛肉のタルタルと、ブーダン、メインにフォーフィレ(背肉の鞍下肉側の肉)をそれぞれ頼んだ。
ほどなくして満席になった。

こちらに連れてきてくれたのは、今料理されている方が、隼平の日本での先輩で、紹介も兼ねてのことだった。

レストラン中に牛肉の焼けた香ばしさが充満する。
タルタルが来た。早速頂こう。

衝撃が走った。
絶句。

むちゃくちゃうまい。何なんだろうこの肉は。味付けは凄くシンプル。肉の味が半端ではない。
ちょっと待て。
僕がいままで食べてきた牛肉とは異質のものだ。

ワインを注がれた。
ワインを飲む。うまい。
やばい。うまい。
にやけてしまう。

隼平のブーダンを一口貰う。
これもうまい! 表面をカリッと焼き切って、リンゴのコンポートが添えてある。 このブーダン、きちんと肉も入っていて、ごろごろと入った脂身とでしっかりとした一品になっている。後から来るスパイスの香りもたまらない。

そして、メインのフォーフィレが来た。要するにサーロインステーキだ。
だが驚くべきは大きさ。 でかい。一皿に500gくらいはあろうか。
分厚い(3センチくらい)肉。
香ばしい焼き色。ナイフを入れると、中から肉汁が溢れだす。
中心がちょうどひと肌くらいになった
ミディアムレア。

急いで口に放り込む。
肉のうまみが凝縮、爆発。
何じゃこりゃーって感じ。ただ焼いただけ。ソースも何もなく、サラダとフライドポテトが添えてある(山盛りに。)
この肉の味に納得がいかない。
うますぎる。
もう笑うしかなく、ワインと共にひたすらその味覚にに浸りこむ。

500g、完食し、まずサービスのおじさんに満面の笑みで、「すばらしく美味しかったです。」

やっとこの素晴らしい料理を作り上げた料理人の手が空いたので、「おいしかったです!」
と伝え、あらためて挨拶をさせていただいた。

その人は茂野眞さん。現在乃木坂の祥瑞 (ションズイ)でシェフをされている。
ここからは、もう何を話したか覚えてない。ひたすらに感動を一生懸命伝えていた。

僕のそんな姿に、茂野さんもとても好意を持ってくれたようで、初めてこちらに来たお客さんでここまで感動してくれた人はカズ君くらいだよと言い、茂野さんもとても喜んで下さった。

茂野さんは、普段はこの近くのレストランに務め、土曜の昼だけ、こちらで料理をしに来ているという。
茂野さんもこちらの肉に惚れきっていて、休憩時間や休日を利用して、先程僕が話したサービスのおじさんに頼んで手伝いに来ているということだった。
そのおじさんがここのオーナー。
彼の名はウイリアム・ベルネー。
若いころ、肉屋で修業し、最高の牛肉を提供するためにこちらをオープンさせた。
以来、国内外の雑誌や新聞に取り上げられ、フランスで一番うまい牛肉を食べられる店として食通や、グラン・シェフ御用達となっている。(もちろん日本の雑誌にも何度も取り上げられている。)


この出会いによって、その後、僕が歩んでゆく人生の方向が定まることになる。

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プロフィール

阿佐ヶ谷のシェフ

Author:阿佐ヶ谷のシェフ
kazuyuki ZENTO (善塔一幸) オーナーシェフ

フランスでの最高の7年半を終え、帰国。
パリ14区に実在した一ツ星レストランのエスプリを引き継ぎ、 “La Maison Courtine" 阿佐ヶ谷でオープン  
場所 杉並区阿佐ヶ谷南3−37−10Ysディセンダンツビル1F

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